小売業を営んでいた方の融資
全盛期のでんきやさん
電気店といえば、みなさんは家電量販店やネット通販を思い浮かべるかも しれませんが、昭和30年~50年代前半くらいまではいわゆる「街のでんきやさん」が台頭していました。
電話一本で蛍光管を取り換えてくれたり、電気器具の修理をしてくれたり、テレビ等の新製品が出ればすぐに持ってきてくれたり・・・
テレビも値崩れをすることなく、テレビ1台売れば1か月ご飯が食べれるというそんないい時代もあったそうです。
家電量販店の台頭により減収…
ところが、1980年代になると家電量販店が秋葉原をはじめ、池袋、新宿に次々登場します。それまで小売り重視だった家電メーカーは方針転換し、家電量販店への大量卸しを行います。卸価格が安い電気製品は当然大型量販店の方が小売り価格も低価格に設定でき、来店客も徐々に減少し「街のでんきやさん」は来店客が減り、来店されても家電量販店で購入した電気製品の設置、工事、修理依頼というようにシフトしていきます。
この方は元々電気工事や修理の技術があったため、この技術を対価に報酬を得るといったビジネスモデルがありましたが、それも自分の店舗で仕入れた商品が売れないので在庫として売れ残ってしまいまい売上は激減しました。
制度融資の利用。そして自転車操業に…
「融資を受けなければ、商売がいずれ成り立たなくなっていってしまう・・・」
そこで、制度融資を使って区の融資斡旋を受けて金融機関から低金利で運転資金を融資してもらいました。
融資を受けた直後は増収になった気持ちでいるのですが、融資後も売上は増えるどころか減るばかり・・・ 売上の減少部分を補填する目的で借りたはずの融資がやがて、毎年融資を受けたことで、返済のために融資を受ける「自転車操業」に陥ってしまいました。
決して制度融資が悪いというわけではありません。この方は、本来の融資の目的を誤解してしまったから起きてしまった失敗事例です。
このようにならないために、融資を検討する際は以下の事を考えてみてください。
融資を受けるときに注目するポイント
何のために融資を受けるの?
既にお店を持たれている方は仕入や人件費の捻出のため、売上の減少分の補填のため、新技術や新商品開発のために融資を受けるのが目的だと思います。
融資の種類としては、仕入や人件費でしたら運転資金、新商品開発のための機械購入でしたら設備資金。
今回の例のように毎年のように融資を受けるのではなく、本当に必要な時のみ融資を受けてきちんと返済する。そしてまた必要となった時に融資を受けるといった基本を忠実に守っていくことが融資を受ける際のポイントだと思います。
本当に受けた融資の返済はできるの?
融資を受けたら一時期手元のキャッシュは増加しますが、返済が始まれば元金の返済とともに利息の返済も始まります。利息を含めた合計金額で、融資の返済できるかどうか考える必要があります。融資の金利が高ければ高いほど金利合計が大きくなるので、なるべく安い金利で融資を受けることも目安の一つです。「融資を受けさえすれば、何とかなる」という変なポジティブシンキングではなく、融資を受けた後にどうすれば手元のお金を増やして返済にあてていくかまで考えていく必要があります。
本当に融資を受ける勝算はあるの?
融資の事業計画書作成に時間を費やして立派なものを作成したとしても、以下の融資の前提条件をクリアしていないとそもそも融資を受けることは難しくなる場合があります。
1)公共料金の延滞はないか(水道、ガス、電気、電話等)
2)税金の滞納はないか(所得税、法人税、事業税、住民税、固定資産税、健康保険等)
3)クレジットの延滞はないか
4)既に融資を受けている場合、リスケジュールを行っていないかどうか
等
※あくまで一般的な基準です。金融機関によって融資判断基準が変わります。
本当に融資を受ける必要があるの?
まとまったお金が必要といった時に融資が絶対の選択肢ではありません。昔ながらの方法として親御さんや親戚や友人から借用するといったものや最近ではクラウドファウンディングといったものも登場しました。様々な選択肢の一つとして融資を考えるのがよいと思います。
融資を受ける際のまとめ
大事なことは借りるときだけでなく、融資を受けた後のことも考えて

